
頑張っているのに上達した気がしない…
いつも他の人より時間をかけているのに、成果が出ない…
「これだけ頑張っているのに…」という焦りを感じているなら、その努力の質を見直すタイミングかもしれません。心理学や行動科学の研究は、成功する人と空回りする人の間には、時間管理や根性以前に戦略の差があることを示しています。
今回は、報われる努力と報われない努力の違いについてご紹介します。
フィードバックの使い方
努力を成果に結びつける最大の鍵はフィードバックです。フィードバックは強力な影響力を持ちますが、単なる褒め言葉はほとんど効果がありません (1)。
フィードバックの目的は、現在地と目標のギャップを埋めることにあるため、以下の3点が重要です (1)。
効果的なフィードバックの3要素:
- どこに向かっているのか?: 目標の設定あるいは再確認
- 今、どういう状況か?: 現在地と目標の距離
- 次に何をすべきか: ギャップを埋めるための具体的行動
「君は頭がいいね」や「君の文章はいつもわかりにくいね」といった人格へのフィードバックは、具体性がなかったりタスクと関係なかったりするため、あまり役に立たないことが多いです。目標や次の行動などについて考えると良いです。
例: 上司から「よくやった」と褒められるだけで終わるのではなく、自分の提案書のどこが顧客に響き、どこが不十分で(現在地)、次の案件でさらに精度を上げるには(目標)、どの資料を参考にすべきか(次への一歩)を確認することが報われる努力のサイクルを作ります。
模試の結果を見て一喜一憂するのではなく、間違えた問題が「知識不足」なのか「ケアレスミス」なのかを分析し、今日からどの単元を優先して復習するかを計画に落とし込みます。
状況、習慣の作り方
「理想の自分」を空想するだけでは、努力の継続には繋がりません。脳が目標をもう達成したと勘違いしてしまい、かえって努力する気が失せてしまいます。
理想と現実をセットで考える心理的対比と、行動を自動化するif-thenプランニングの組み合わせが、目標達成率を高めます (2)。
心理的対比とは、理想の未来と、それを阻む現在の障害(現実)をセットで考えることを言います。
例: 理想=次の模試で数学の偏差値を10上げる、障害=模試では緊張していつもケアレスミスをする&勉強中は難問にぶつかるとすぐにスマホを触ってしまう
理想=プロジェクトを成功させて、昇進のチャンスを掴む、障害=気づくと同僚と雑談してしまい、企画立案に充てる時間が1時間も取れていない
if-thenプランニングは、「もし(if)Aという状況になったら、そのとき(then)Bという行動をとる」**といったように、行動とそのタイミングをあらかじめ決めておく手法です。
例: if(状況): 「夕食を終えて、自分の机に座ったら」、then(行動): 「スマホの電源を切ってカバンに入れ、数学のワークを2ページ解く」
if(状況): 「午前中の会議が終わったら」、then(行動): 「デスクに戻ってすぐに、新しい企画を5つ書き出す。」「同僚に話しかけられたら、17時に話そうと伝える。」
上記を組み合わせます。「ただ頑張る」という根性論を捨て、「障害が起きたらどうするか」まで逆算して設計することが重要です (2)。
- Wish: 達成したい目標を一つ決める。
- Outcome: それが叶った時の最高の気分を想像する。
- Obstacle: それを阻む最大の要因(自分の行動や感情)を特定する。
- Plan: その障害が起きたらどうするかを「if-then形式」で決める。
目標の立て方
多くの人が陥りがちな報われない努力の特徴は、ベストを尽くす、明日から頑張るといった曖昧な決意です。曖昧な目標は、具体的な数値目標に比べてパフォーマンスを著しく低下させます (3)。
数値などを用いつつ、できるだけ具体的で少し困難な目標を立てるようにしましょう。
具体的で少し困難な目標を立てることのメリット (4):
・注意の喚起: 具体的な目標を立てることで、重要な作業にのみ集中しやすくなります。
・エネルギーの注入: 目標が少し高め(困難)であると、大きな努力が引き出されやすくなります。
・持続性の向上: 困難な目標を設定することで、努力をより長く持続させます。
・戦略の発見: 難しい目標に直面すると、人はそれを達成するための新しいやり方を自ら探し始めます。
例: 「今月は頑張って売上を伸ばそう」ではなく、「新規顧客を5件獲得するために、毎日午前中に10件のフォローアップメールを送る」という具体的な目標を立てることで、無駄な迷いが消え、行動が加速します。
「テストに向けて数学を勉強する」ではなく、「次の模擬試験で80点を取るために、第3章のこの部分を間違えやすい傾向があるから、今日中に問題集の第3章の類題を全問正解できるまで繰り返す」と決めます。
戦略の工夫
目標を達成するための方法を工夫することは非常に重要です。数学の得点を上げたいのに足し算の練習を毎日しても得点は上がらないでしょうし、ホームランバッターになりたいのになんとなくバットの素振りをしていても上達しないでしょう。
例えば、学習において、多くの学生が好む教科書を繰り返し読む再読や重要なところに線を引くといった勉強方法は、実は学習効果が低いことがわかっています (5)。上記の「フィードバック」をもとに必要な学習を選択しつつ、効果的な方法を見つけることが重要です。
例えば、学習において効果的とされる勉強方法は以下です。
想起: 読んだ直後に「何が書いてあったか?」を思い出すテストを行うことが、記憶の定着に効果的です。
分散学習: 一度に詰め込むよりも、数日、数週間おきに分けて復習するほうが、長期的な記憶として残りやすくなります。例えば、今日は英語デーと決めて英単語をひたすら暗記しようとするのではなく、今日は30語、明日はその復習と新しい30語といったように再学習の機会を増やす。
バッティングにしても闇雲に素振りをするのではなく、今日の試合では早く体が開いてしまったから、今からやる素振りは体の開きを抑えるために下半身から動かそう、動画を撮りながら素振りをしてみようというように様々な工夫ができます。
まとめ
「なんとなく努力する」ではなく、
- 目標を具体的で少し困難なものに設定し
- 自分がどこにいるのか
- 目標を達成するために何が必要かを考え
- 効果的な方法を模索
し続けることが報われる努力に繋がります。
参考文献
- Hattie, J., & Timperley, H. (2007). The power of feedback. Review of educational research, 77(1), 81-112.
- Wang, G., Wang, Y., & Gai, X. (2021). A meta-analysis of the effects of mental contrasting with implementation intentions on goal attainment. Frontiers in Psychology, 12, 565202.
- Duckworth, A. L., Taxer, J. L., Eskreis-Winkler, L., Galla, B. M., & Gross, J. J. (2019). Self-control and academic achievement. Annual review of psychology, 70(1), 373-399.
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American psychologist, 57(9), 705.
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public interest, 14(1), 4-58.

