
「あなたにとって大切なものは何ですか?」
日々の忙しさを理由にあまり自分の価値観について考えてこなかった方も多いと思います。
仕事、家族、自由、お金、人間関係、…
もちろん、こうした答えも価値観の一部です。
しかし、本当に難しいのは、自分では大切だと思っているものと、実際の生活で大切にしているものが一致しているとは限らないことです。
たとえば、「家族との時間を大切にしたい」と思いながら、仕事ばかりしている。
「自由に生きたい」と思いながら、周囲からどう思われるかや流行、政治を気にして進路を決めている。
このような理想と現実のズレは、人生の選択で迷う大きな原因になります。では、自分の価値観はどうやって見つければいいのでしょうか。
そもそも「価値観」とは何なのか?
まず、「価値観」と「目標」を区別する必要があります (1)。
目標とは、達成して完了できるものです。たとえば、「起業して自分の会社を持つ」、「年収1,000万円を稼ぐ」、「海外に住む」、「結婚する」、「マラソンを完走する」これらは基本的には目標です。
価値観は人生のコンパスあるいは自分のなりたい人物像のようなものです。
目的地(目標)に到着しても、コンパスが示す方角(価値観)が消えることはありません。知識を深める、成長する、自由でいる、人とのつながりを大切にする、誠実でいる、他者に貢献するといったものは、より価値に近いものです。
たとえば、家族と旅行に行くことは目標ですが、大切な人とのつながりを持ち続けることは価値です。旅行が終わっても、つながりを大切にするという価値は終わりません。
価値観はある程度共通性がある
「本当の自分の価値観は何だろう?」と考えると、まるで自分の心の奥に正解が隠されていて、それを発掘しなければならないように感じます。ですが、価値観は、すぐに浮かんだり、自分を深掘りすれば見つかるものとも限りません。
まずは、どんな価値が一般的なのか知るのも良い方法でしょう。
心理学の研究では、文化を問わず人間には共通する10の価値観があるとされています (2)。
自分にとって以下のどれが重要か、直感で選んでみましょう。
自己決定: 自分で考え、行動し、創造すること、自分の人生を自分でコントロールすること
刺激: 変化、刺激、人生への挑戦
快楽: 自分自身の楽しさや心地よさ
達成: 社会的基準に基づいた個人的な成功
権力: 社会的地位や威信、支配力
安全: 社会、人間関係、自分自身の安定と調和
同調: 他人を傷つけたり、社会の規範を破ったりしないこと
伝統: 文化や宗教が提供する慣習や考えの尊重
思いやり: 家族や友人など、身近な人々の幸せを大切にすること
普遍性: 全ての人々と自然の幸福への理解と保護
「自分には価値観がない」というより、「自分の中に複数の価値があり、その中で何を優先するかが明確になっていない」のかもしれません。
例えば、私の場合は、安全が大事だなと感じています。どこかに住むことを考えた時にこの安全という価値観があると、とりあえず海外に住んでみたいという気持ちよりも、清潔で治安の良いところを基準に生活圏を決めたいなと思います。また、達成や権力よりも思いやりを常に持っていたいなと思いました。
いくつか自分に質問を投げかけてみる
自分を客観的に見つめるために、以下の質問を自分に投げかけてみてください (3)。また、あなたの行っている行動が、他人の期待に応えるための義務になっていないかも確認してみましょう (4)。
- 最高の自分はどんな特性(誠実さ、勇気、優しさなど)を持っていますか?
- 自分自身あるいは他人に対して、どう接したいと思っていますか?
- 最終的にどんな人になりたいですか?
- 現在の行動をしている時、自分自身が生き生きとしていると感じますか?
- それは自分がそうしたいから選んでいますか? それとも誰かがそうすべきだと言っているからですか?
人生の領域から価値観を特定する
人生の特定の領域(仕事、家族、健康など)に焦点を当てることで、価値観が見つかりやすくなることが示されています (5)。
- あなたの人生の主な領域(家族、友人、健康、キャリアなど)の中で、今一番大切にしたいのはどこですか?
- その領域は、あなたにとってなぜ重要なのですか?
- もしその領域で望ましい変化が起きたら、あなたの人生はどう変わると思いますか?
価値観を掘り下げる「カード・ソート」ゲーム
価値観の明確化のための簡単なゲームをすることも効果的です (6)。
以下などで価値観ゲームをした後に、その価値観について考えてみましょう。

- その価値観は、あなたにとって具体的にどんな意味がありますか?
- なぜ、数ある価値観の中から、それを大切なものとして選んだのですか?
- これまで、日々の生活の中でその価値観をどのように表現してきましたか?
- もっとその価値観に忠実に生きるには、あとどんな方法がありますか?
価値観に基づいた小さな行動を試す
価値観は一度決めて終わりではありません。研究によれば、「自分が大切にしたい価値観について考え、それを実現するための小さな行動を計画する」というプロセスが、自尊心を高め、ストレスを軽減させることがわかっています (7)。
価値観に一致した行動を意識することが重要です。
家族との時間を大切にする: 忙しくても半年に1回は実家に帰る、週末に子供と一緒に料理をする、公園へ行く
友人のサポート: 友人と集まる時間を確保する
健康: ずっと先延ばしにしていた血液検査や歯科検診を受ける、定期的な健康診断のために予約を入れる、30分座りっぱなしだったら、5分間運動する。 「週に3回10分の運動」という計画を立てて実行する
新たな挑戦: 新しい職について誰かに相談する、毎日新しい挑戦を朝に計画してみる、これまで行ったことのない国に行ってみる、ボランティアに参加してみる。
学び、成長: 寝る前に本を読む、自分が強い関心を持っているテーマのYoutubeを見る、これまで知識がなかった資格試験に申し込み勉強してみる
行動を成功させるコツ
上記の行動を実際に行う際に役立った要素が分析されています (5)。
- 計画とリマインダー: 「いつ、どこでやるか」をスケジュールに組み込み、ノートやスマホにリマインダーを設定することが効果的です
- 支援環境: 友人や家族に相談し、サポートを受けながら行動することで、価値観に沿った行動をしやすくなります
- コミットメント: 「私はこれをやる」と自分自身、あるいは他人に宣言することで、実行率が高まります
- 重要性: その行動をとることにより、自分の人生がどう変化するかを考える、この行動は重要なんだと認識することで、行動に起こしやすくなります
参考文献
- Reilly, E. D., Ritzert, T. R., Scoglio, A. A., Mote, J., Fukuda, S. D., Ahern, M. E., & Kelly, M. M. (2019). A systematic review of values measures in acceptance and commitment therapy research. Journal of Contextual Behavioral Science, 12, 290-304.
- Schwartz, S. H. (2012). An overview of the Schwartz theory of basic values. Online readings in Psychology and Culture, 2(1), 11.
- McLoughlin, S., Stapleton, A., Pendrous, R., Oldham, P., & Hochard, K. D. (2025). A multi-study paper on the development and validation of the value clarity questionnaire in adults and adolescents. Counselling Psychology Quarterly, 38(4), 1103-1134.
- Barney, J. L., Lillis, J., Haynos, A. F., Forman, E., & Juarascio, A. S. (2019). Assessing the valuing process in Acceptance and Commitment Therapy: Experts’ review of the current status and recommendations for future measure development. Journal of Contextual Behavioral Science, 12, 225-233.
- Russo-Netzer, P., & Atad, O. I. (2024). Activating values intervention: An integrative pathway to well-being. Frontiers in Psychology, 15, 1375237.
- Personal Values Card Sort. https://truesport.org/wp-content/uploads/2025/10/Values-Card-Sort_TS-Talks.pdf
- Bojanowska, A., Kaczmarek, Ł. D., Urbanska, B., & Puchalska, M. (2022). Acting on Values: A Novel Intervention Enhancing Hedonic and Eudaimonic Well-Being: A. Bojanowska et al. Journal of Happiness Studies, 23(8), 3889-3908.
